自動車保険(任意保険)に加入する上で、チェックしておくべき事を説明したいと思います。ご自分の自動車保険の保障内容をよく把握されていない方も多いのではないでしょうか?
保険はいざという時の為に入るものですが、保障内容がしっかりしていないと、いざという時に十分な補償がされないという事になりかねません。
当然、自動車保険には加入されている方がほとんどだと思います。
自動車保険はほとんどが1年契約です。1年毎に保険代理店などから連絡があるのはその為です。
ですので、現在のご加入の保障内容についてよく理解していただき、次回の契約更新時に上手に保障内容を見直せるように、保険証券と見比べながら読んでいただけると良いと思います。
自賠責保険(強制保険)と任意保険の違い
自動車で公道を走行するには、自賠責保険(強制保険)に加入する義務があります。自賠責保険は車自体に掛ける保険です。
「私の車って自賠責保険に加入しているの?」
と、心配される方もいらっしゃるかもしれません。しかし通常は車検を受ける時に入っていますので、心配する必要はありません。自賠責保険に加入していないと車検が受けられませんから、きちんと車検に入っているお車であれば心配はないのです。
では、自賠責保険ってなんでしょうか?
自賠責保険とは?
簡単に説明をしますと、相手方に怪我を負わせたり、死亡させたりした場合だけの最低限の対人補償です。
保障の限度額は以下のとおりです。
- 怪我 120万円
- 死亡 3,000万円
これで十分じゃないの?
そう思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、全く不十分です。
怪我による120万円の補償について
基本的に、交通事故での入通院は健康保険は適用されません。仮にムチウチで3ヶ月通院されたとすれば、120万円は軽くオーバーする可能性があります。入院されるような怪我でしたら、休業補償も加わってきますし120万円じゃ全く足りないでしょう。
死亡による3,000万円の補償について
人の命はお金には変えられないかもしれませんが、それでも加害者が被害者(遺族)に対して、お金で賠償するのは最低限の義務です。
賠償金額のベースとなるのは、その人の生涯収入です。大会社の社長さんだったら、年収が数億円かもしれません。3,000万円では全く足りません。現に過去に死亡保障として5億円の請求が認められたケースもあります。
自賠責保険の対人保障で不足しているのは分かっていただけたと思います。しかも対物保証(物に対する保証)は全くの対象外です。
ですので、自賠責保険以外に任意の自動車保険(任意保険)に加入して、しっかりした保障を付けておく必要があるのです。
自動車保険は、自動車を運転する上で必ず入っておくべき保険です。自動車保険に加入していないと、何かあった時に相手も自分も困る事になります。
対人賠償保険:他人の身体への賠償を対象とする保険
これは、何が何でも無制限にすべきです。
自賠責保険の項でも前述しましたように、対人賠償額は超高額の賠償が必要になる場合もありえます。
死亡事故でなくとも、後遺症を負わせた事故で3億円を超える賠償が認定された例もあります。
対物賠償保険:他人の財物への賠償を対象とする保険
これも無制限にしておく事を強くお勧めします。
なかには1,000万円等、上限付きにされておられる方もいらっしゃいます。
1,000万円以上する車ってほとんど走ってないでしょ?
と、そう思われておられるのかもしれません。
しかし、交通事故における対象の物損事故は自動車に限ったものではありません。電柱やガードレールや家や店舗や建物もあります。しかも、公共の物は原価はそんなに高くないのに、賠償額はべらぼうに高かったりします。
電柱を倒したら高いもので800~1,000万円です。信号機も高いものは1,000万円以上するらしいです。ガードレールに擦ったら10mで数十万円は掛かります。
- ガードレールに接触して、信号機に突っ込んだ
- 対向車と接触して、電柱に突っ込んだ
- 玉つき事故を起こした
物損で軽く1,000万は超える損害の事故なんて普通にあります。ですので、無制限にしておく事を強くお勧めするわけです。
過去の例で、パチンコ屋へ突っ込んでしまい、休業損害も含めて1億円を超えた賠償が認定された例もあります。
また対物賠償保険には、免責金額が設定されています。
- 免責0
- 免責5万
- 免責0-10万
などです。
免責5万とは、対物の損害に対して5万円を超えた分を(設定上限額を限度に)保険会社が負担するというものです。ですので、5万円は自己負担となります。
免責0ー10は、1年の契約期間内に起こした対物に対する保障の自己負担額は、1回目は0円ですが2回目以降は10万円ということです。
対物賠償保険に付けるべき特約
対物賠償保険で付けておくべき特約が一つあります。保険会社によって呼び名は違いますが、対物超過修理費用特約です。
分かり易く、例え話で説明します。
例)状況
・あなたが運転していて、私(江頭)の営業車に追突
・過失はあなたが100%
・フレームまで歪み、修理費用は30万円
・対物賠償保険は無制限に加入
しかしこの場合、あなたの自動車保険では30万円の賠償は出ません。
無制限の対物補償保険に入っているから大丈夫でしょう!?
なぜなら、弊社の営業車は古い車で、車両としての価値が10万円くらいしかないからです。
保険会社は、車両の価値以上の修理代は保証しません。この場合は10万円程度です。理屈上は「この車は10万円の価値しかないから10万円で買い替えてください。」ということです。
しかし私はこう言いました。
買い替えずに修理してでも乗りたいです!
では、差額の20万円はどうなるのでしょうか?
修理工場には30万円を支払わなければなりません。
保険会社は10万円しか払う必要はありませんので10万円しか払いません。
加害者である、あなたも払いません。
そうです!
法律に則って厳密に言えば、被害者である私が負担する事になります。
でも、考えてもみてください。私には何の非も無く追突されたのに、修理代に20万円も負担できますか?
私は追突された側なのに、20万円も払うのはおかしい!
当然ながら私は、あなたに文句を言って差額を負担するように交渉します。保険会社はとり合ってくれませんので、私とあなたの話し合いになります。
あなたは、自分に非があるからと言って20万円を負担するか、法律的に払う義務のないものは払わないかのどちらかです。
道徳的に言えば、加害者であるあなたが払うのが当然だと思えます。しかし法律的には払う義務はありませんので、払わなくても罰せられません。
当然私も引き下がれませんので、20万円を負担してくれるように交渉します。
払ってもらわないと困るんです!あなたが悪いんだから何とかしてくださいよ!
と、こんな事例の揉め事がよくあります。結局は、どちらの言い分も間違ってはいないのです。
被害者から言えば、
ぶつけられたのに、何で20万円も払わなければいけないんだ!
加害者から言えば、
ぶつけたのはこっちが悪いけど、法律で払う必要がないって決まってるんだ!
って事になります。どちらも間違っていないから揉めるのです。
最近は、車の性能が上がった事や不景気のせいなどがあって、10年落ちの自動車なんて普通に走っていますよね。
この対物超過修理費用特約に入っておくと、100万円を限度額として(保険会社によって異なります)差額を補償してもらえます。
事例では私が被害者でしたが、実際は怖い人や面倒な人も世の中にはたくさんいます。万が一のトラブルを防ぐ為にも、対物超過修理費用特約を付けておく事を強くお勧めします。
対物超過修理費用が対象の被害者になったら
上記では、加害者になった時の為に対物超過費用特約を付けるべきだと言いましたが、もしもあなたが古い車に乗っていて交通事故の被害者になり、相手が対物超過費用特約を付けていなかった場合はどうすれば良いのでしょうか?
できれば加害者と交渉して支払ってもらうのが一番良いのですが、なかなかそうはいかないものです‥
修理費用は30万円だが修理代が10万円しか保険で賄えなかったという、上記の例で説明します。
一つ目の方法としては、事故に遭った車を廃車にして保険金の10万円で買い替える方法です。
しかし不思議な事に、車の価値が10万円だと判断されても、実際に同程度の車を買おうとすると10万円では買えないものです‥実際には、追加で手出しをしての買い替えになる事が多いです。
二つ目の方法としては、自動車を修理に出す修理工場にしっかりと相談をする事です。
修理工場もそういった事例には何度も遭遇していますし、親身になってくれるところも多いと思います。
と言いますか、親身になってくれる修理工場に行く事が大切です。そしてぶっちゃて言うならば、
なんとかして修理を10万円ほどでやれませんか?
と相談する訳です。
これは、修理費用を値切れと言っているのではありません。10万円でできる修理方法が無いのか尋ねる訳です。
例えば30万円の修理費用のうち、新品バンパーへの取替えとバンパー塗装代が含まれていれば、それを中古バンパー(同色色付き)に交換してもらったりする訳です。単純にそれで数万円は安くなると思います。
その他の部位も、少々のキズやへこみや歪みには目をつむる事にすれば、修理箇所が減ってその分が安くなるかもしれません。
当然、中古バンパーにはキズもあるでしょうし、その他の少々のキズやへこみには目をつむって妥協する事になります。
それでも、20万円の手出しが無くなる(減る)と思えば我慢できるのではないでしょうか。
ダイ・ケンオートサービスはお客様のご要望に寄り添います!
人身傷害保険:自身の過失分まで補償
対人賠保険は事故相手に対する保証ですが、人身傷害保険は運転者自身や搭乗者に対する保証です。
人身傷害保険はかなり複雑ですので、要点だけを出来るだけ分かりやすく説明します。
人身傷害保険は交通事故で、対象の自動車に搭乗している全ての人が対象となります。3,000万円~無制限の間で設定できます。(保険会社によって違いはあると思います)
例を出して説明します。
例)状況
・あなたが運転中に交差点で事故
・過失割合は20(あなた)対80(相手)
・あなたの怪我による損害額は500万円
※損害額には、治療費、休業損害、精神的損害などが含まれます。
あなたのケガによる損害額に対して、相手が400万円(500万円の80%)負担します。では残りの100万円は?
もちろん自己負担です!あなたが負担します。
では、あなたの過失が80だったり100だったりした場合は大変な事になりますね!
そんな時に頼りになる保険が、人身傷害保険です。
対象の自動車に搭乗している人が死傷した場合の損害額に対して、足りない分を補ってくれる保険です。
例えば自損事故だった場合では、対象の自動車に搭乗している人が死傷した場合は、損害額の100%を補ってくれます。
さらに交通事故はあなただけの問題ではありません。もしもあなたの運転ミスで‥
助手席に乗せていたご主人さんが亡くなられたら?
身内ならまだいいほうでしょう。
友人や友人のお子様を乗せていて、死亡させてしまったら?
考えるだけで恐ろしくなります。同乗者にもしっかりとした保証を付けることは、運転者の責任だと思います。
車両保険:衝突接触などの偶然な事故によって、車に損害が生じた場合に適用される保険
車両保険を付けるか付けないかで、支払い保険料は大幅に変わってきますので、車両保険を付けるかは悩むところです。
私個人的には、
- 高い車に乗られている方
- 免許を取って間もない方
- 運転に自信の無い方
などは、できるだけ付けておいた方がいいと思います。
車両保険と言っても、いくつかの種類があります。
※呼び名や保障対象は、保険会社によって変わります
- 車両保険:一般
-
交通事故による自車の損害
火災・爆発
台風・洪水・高潮
盗難
自損事故
あて逃げ - 車両保険:車対車+A
-
交通事故による自車の損害
火災・爆発
台風・洪水・高潮
盗難 - 車両保険:車対車
-
交通事故による自車の損害
車両保険に入っているから、自損事故でも保険が出ると思っていたのに、実は車両保険:車対車+Aに入っていて、自損事故は出なかったなんて事があります。
ご加入の車両保険の種類はしっかりと確認しておきましょう。また、対物賠償保険と同じように、免責金額が設定されていますのでそこにも注意しましょう。
ちなみに台風による飛来物などによって車への損害があった場合は、車両保険:一般や車両保険:車対車+Aで対象になります。
等級とは
自動車保険に初めて加入した時は、6等級からスタートします。
契約日から1年間、保険を使う事故が無ければ翌年から1等級上がります。
逆に、保険を使う事故があった場合は、1つの事故に対して3等級下がります。
等級が上がれば割引率が増えます(支払い保険料が安くなります)
等級が下がれば割引率が下がります(支払い保険料が高くなります)
ちなみに1等級まで下がってしまうと、自動車保険の加入を拒否される場合がありますので注意が必要です。
その他の特約
自動車保険はこれまで説明してきました、
- 対人賠償保険 – 相手の人への保証
- 対物賠償保険 – 相手の車や物に対する保証
- 人身傷害保険 – 自身や同乗者への保証
- 車両保険 – 自身の車に対する保証
が、基本的な保険内容です。後は必要に応じて、各種特約を付けていきます。弁護士費用特約や、等級プロテクトなどいろいろあります。
意外と忘れがちなのが、自動で付随されている特約があったりする事です。
例えば最近では、ロードサービスが自動で付いている保険会社も多いようです。
これは、現場修理(キー閉じ込めや簡単な応急処置など)やレッカー移動などのサービスが無料で受けられたりするサービスです。
この事を知らないで、キー閉じ込めの時に鍵屋さんを呼んだり、レッカー移動でレッカー業者さんを呼んだりしては、かなり損をする事になります。
この辺は保険会社によって変わってきますので、保険証券をよく確認するなどをしておいた方が良いと思います。
自動車保険の見直し
ここまでで、自動車保険の大体の事は分かってもらえたと思います。実は、自動車保険を見直す事で保険料が安くなるポイントがあります。特に自動車保険の更新の時に、
よく分からないけど、これまでと同じ内容で良いです!
といった感じで、内容を確かめずに切り替えをしている方は特に要注意です。
運転者の範囲
被保険自動車に対して、補償対象者が誰であるか?運転者の範囲を限定する事で、保険料が安くなる可能性があります。
保険会社で若干の違いはありますが、
- 本人限定
- 本人・配偶者限定
- 家族限定
があります。もしも被保険自動車は夫婦しか運転しないのに、本人・配偶者限定を付けていない場合、無駄な保険料を支払っている事になります。
運転者年齢条件
同じように、運転者の年齢条件を正しく設定する事で、保険料が安くなる場合があります。
保険会社で若干の違いはありますが、
- 年齢を問わず担保(すべての年齢が対象)
- 21歳未満不担保(21歳以上のみ対象)
- 26歳未満不担保(26歳以上のみ対象)
- 30歳未満不担保(30歳以上のみ対象)
- 35歳未満不担保(35歳以上のみ対象)
といった区切りになっています。上記の2点に加えて、子供特約や臨時運転者特約を組み合わせれば、更にお得になる可能性もあります。
■例えば45歳のご夫婦で、同居の子供が19歳の場合
子供さんが極稀に運転する場合があるからと言って、年齢を問わず担保(すべての年齢が対象)にするよりも、35歳未満不担保(35歳以上のみ対象)にして子供特約を付けたほうが安くなる可能性があります(詳しくはご加入の保険会社にご相談ください)。
運転者の範囲や年齢条件は年々環境が変わってくると思いますので、定期的に見直す必要があります。
また保険会社によっては、免許証の色や年間走行距離や安全装置(エアバッグ・ABS・イモビライザーなど)の有無、車の使用目的(業務使用、レジャー使用など)でも保険料が変わってきますので、きっちりと正しく申請する事で保険料が安くなる事もあります。
保険会社のうっかりチェックミスなんて事も稀にあります。自動車保険は、保証内容を毎年見直す事をお勧めします。
まとめ
自動車を運転する場合は、自動車任意保険に入っておくことの重要性は分かっていただけたかと思います。いざという時のためにも、自分のためにも相手のためにも、保証内容を充実させておくことは大切です。
最低限のポイントとして、
- 対人保証→無制限
- 対物保証→無制限
- 対物超過費用特約を付帯
- 人身傷害補償→最低3,000万円
となります。
現在の保険会社は外資系やネット系も含めかなりの数があります。保険料の安さだけで選ぶのも良くないと思えます。
また通常は代理店を通じて契約をします。同じAという保険会社でも、代理店によって対応の良し悪しがあったりもします。
保険料の安さだけで選んで、いざという時に対応が悪いと意味がありません。どの保険会社が良いとは言えませんが、現在の保険会社に不満や不安があるのでしたら、更新時に他の保険会社に変えるのも良いかと思います。
しっかりとした自動車保険に加入して、安心できるカーライフをお楽しみください。